異常高温だった今年は、榧木の実は豊作でした！

縄文時代によく食べられていたというこの実。
縄文海進の進んだ暖かい時代にたくさんあったのに、
その後数を減らしたのは、気温の低下のせいもあったのでしょうか。
それならこの木は、地球温暖化の勝ち組なのでしょうか？

一方では、木は、生命の危機を感じると、次世代に命を繋ぐために
最後に沢山の実をつけるとも言われます。

後者だったらどうしよう。
せめて残してくれた種子を蒔こうか。
でも、榧木は、成長の遅いことで有名です。
何百年も生き続ける大木は、私たちが生きている
間に、どれだけ育つのでしょう。
大木との出会いも、本当に一期一会なんですね。
地球環境のためにも、貴重な大木を残していきましょう。
＊＊＊＊＊＊

アーモンドそっくりの、存在感あるこのナッツをつける木の名は、
「榧(カヤ)」。同音の「茅」という植物とは別物です。

農耕の始まる前、日本列島が深い森に包まれていた頃、
この木の実は列島に住む縄文人たちの貴重な食糧でした。

脂肪がたっぷり詰まって栄養・効能豊か。現在でも
高級食材とされ、高級食用油や漢方薬の原料でもあります。
大相撲の儀式では、洗い米や干し柿、スルメなどと一緒に、
カヤの種子が「神への捧げ物」として、土俵に埋められるそうです。

種を包む緑色の果実は、清々しい香りを発します。
この香りには殺菌効果もあるそうで、周囲を浄化する木として
神聖視され、神社仏閣の境内などにも植えられてきました。
また、葉を燃やして蚊よけに、木材は高級将棋盤にと、
列島の生活の中でその後も重宝されてきました。

ところが、大木に育つため多くが切り倒されてしまったのか、
(ムクロジもそうです)、今では榧の木は人里ではあまりみかけません。
常緑で冬でも光合成をし、周囲にフィトンチッドを発散し、
私たちの健康のために大きな役割を果たしてきたこのような木を、
しっかりと住環境に残すことを考えないのは、本当に愚かなことです。

お住まいの街のどこかに、9月には清々しい香りを放つ緑色の果実をつけ、
艶々と輝く針のような葉を茂らせた、榧の木が見つかりますように。
そして、豊かな深い森に包まれた、縄文時代の日本列島を想像して
いただけますように。

<カヤの実(生)>
直径:約1cm 長さ:約2〜3cm
2023年 9月・日本産
約80g (50粒前後)
採取後、水洗い・天日干し。加熱処理はしていません。
*黒っぽい色が部分的についたものもあります。